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平成26年度宮崎県協働による未来みやざき創造公募型事業

「344名のアンケートデータのレポート」

宮崎ひきこもり当事者活動人:内田 昌宏


「宮崎県における精神障がいを抱える方の就労及び地域生活に関するアンケート」
に関する考察

2015/5/3 作成:内田昌宏

 ※項目等の表記については、主旨から逸脱しない程度に作成者が改変

Ⅰ.調査概要

平成26 12 10 日~平成27 3 6 日の間、宮崎県内在住の精神障害を抱える方に実施。1,000 部配布し344 名の有効回答。 

Ⅱ.概要項目適宜抽出。単位:名。

Q1 性別

男性207、女性131、未回答6 

Q2 年代

10 320 3330 7140 8750 8960 5070 代以上8、未回答3

40 歳未満は107 40 歳以上が234

Q5 診断名

統合失調症138、うつ病35、発達障害17、てんかん10、双極性障害9、高次脳機能障害8など。

・回答者は、統合失調症が多い。

Q6 収入源複数回答あり※以下指摘のない場合は同様

年金191、工賃115、給料72、生活保護51、親の支援35

・社会保障支給が主な収入源である傾向。

Q7 同居者

母親137、独り暮らし103、父親89、配偶者31 など。

Q8 住居形態複数回答なし

実家149、アパート91、施設28、グループホーム27 など。

・親と同居か、アパートにて独居の傾向。

Q10 情報を得る手段

テレビ272、新聞135、インターネット89、家族79、知り合い87、友達71、書籍32

・テレビ・新聞等のマスメディアにより情報を入手している。

Q11 主な移動手段

車(自動車)127、徒歩122、自転車117、送迎車56、バイク40、タクシー24、電車17など。

・自立移動(徒歩・自転車・バイク)以外の手段(送迎・タクシー)が少なくない。

Q12 日中の過ごし方

○宅内540

テレビ視聴115、音楽鑑賞90、家事88DVD 鑑賞62、インターネット58、読書47、ゲーム40、創作活動23、勉強17

○宅外331

買い物158、散歩74、スポーツ・運動41、公共施設31、ボランティア活動18、映画館9

・宅外に出て活動的に過ごすより、宅内にて静動的に過ごしている傾向

Q13 ストレス発散法

買い物130、音楽鑑賞94、テレビ77、たばこ76、散歩76 など。

・日中の過ごし方上位が、ストレス発散法と重複傾向。

一般論として、就労者は日中仕事のストレスを発散するために、買い物などするが、回答者にあってはこの区別が明確でない。

行動の選択肢が少ないため、重複することとなっているか。または、ストレス発散として日々を過ごしているか。

いずれにしても、活動(高ストレス)―余暇(低ストレス)のメリハリがつきづらいため、充実感が感じにくい生活状況と思われる。

Q14 自己認識

病気を克服したい123、障害・病気を受容している119、人見知り106、神経質103、話す人が少ない102 など。

・病気・障害は受容しつつ生活しているも、人間関係に不安があり孤立感がうかがえる。

Q15 やってみたいこと

仕事164、趣味110、国内旅行100、資格取得70、海外旅行58 など。

・今より活動的な生活を望んでいる。

Q16 20 恋愛・結婚・性については割愛

Q21 現在利用している機関・サービス

医療機関224B 型事業所93、地域活動支援センター83、デイケア79、訪問看護64 など。

A 型事業所49、就労移行支援事業所38

・医療系機関を多く利用している。

Q26 利用している機関・サービスでこまっていること

病気・障害を理解していない言動をされる37、薬が高すぎる25、言葉の暴力23、自己決

定できない19、ほったらかしにされる16

・コミュニケーション場面(意思の疎通)で問題が起きている様子。

Q22 相談手段ごとの相談しやすい時間帯

電話:午後82 午前50、夜50

メール:夜44、午後32、午前22

対面:午後124、午前78、夜26

・午後が相談しやすい傾向あり。

Q23 誰に相談しているか

医師183、家族117、精神保健福祉士85、友人78、ピアスタッフ66 など。

・医師・家族に相談する傾向あり。

Q24 人に相談しない理由

話をうまく伝えられない19、誰に相談してよいか分からない12、秘密を守ってくれない

11、忙しそうにしている10、話を聞いてくれない7

・相談事をうまく伝えられないことが人に相談しない第1の理由であり、これは当事者の努力によって解決する事柄。続いての理由は、すべて相談を受けてる側が工夫する問題。

誰が相談に乗るのかの明示。いつ、どのように相談を持ちかければいいのか相談手順の明

示。守秘義務の制限の明示。当事者の心の内を察し相談事を整理する相談技術の向上。

Q25 本当は誰に相談したいか

医師99、家族70、精神保健福祉士58、友人52、ピアスタッフ43 など。

・専門職と家族に相談したい傾向あり。すでに当該者に相談している当事者であっても、満足してはいないよう。

Q27 地域生活するにあたって望む場

いつでも自由に出入りできる場所140、無料でいられる場所132、自宅から近い場所109

仲間がいる場所98、支援者がいる場所93

・自宅から近く、無料でいつでも自由に出入りできて、仲間や支援者(理解者)がいる場所があると、地域で生活しやすいよう。

Q28 利用したい曜日

・平日日中に利用したい傾向あり

Q29 地域向けの啓発セミナー

お茶会・レクレーション128、病気の理解99、当事者の講演53、病状の体験50、当事者家族の講演25

・人と触れあう楽しい機会を一番欲している。セミナーとしては病気・病状の理解をうながす内容を期待している。

Q30 ~は就労状況について一部割愛。

・幅広い職種で就労している現状が分かる。困っていることは収入が低いことや人間関係。

Q38 働いていない理由

精神面(の不調)43、体力(不足)29、希望に合わない26、人間関係20、就労場所がない17

・心身の不調が一番の未就労理由。就労阻害要因。

Q41 働くにあたって望む制度

昇級・ボーナスなどの賃金面でのインセンティブ106、その時々の心身の調子に合わせて

労働時間の調整ができる102、一定の収入の保証91、苦手なことの補助91、働く時間を

自分で決められる87

・一定の収入が保証され、不安定な心身の状態でも働くことができる体制(ビジネスモデル)を望んでいる。特に、極めてフレキシブルに労働時間を自己決定できることを望んでいる。

【考察】

生活状況は、実家・アパート住まいで、仕事や交流の場が近くにないと孤立しやすい状況。社会からの働きかけ、社会に居場所を作ることが必要であろう。

経済状況は、年金・生活保護などの社会保障による支給が主な収入源であり、都合、必要最低限の生活費で生活せざるを得なくなっている。状況改善のためには収入面の当てが必要であろう。

情報は、テレビ新聞等のマスメディアによって取得していることから、当事者への周知にあたっては、マスメディアの活用が効果的と思われる。

主な移動手段は、自動車に次いで長距離の移動には不向きな徒歩や自転車が多いことから、住居地近くにてサービスを提供するようにした方が現実的であろう。

相談機関を利用しやすい時間帯としては、おおむね午後であり、相手としては医師、家族、専門職等を望んでいる。

全般的に静動的な日常生活だが、就労をふくめそのような生活を送っている理由としては、心身の調子の不安定性が原因として挙げられよう。特に、就労するにあたっては、心と身体の不調及びそれにともなう人間関係の不調が、就労を阻む要因として働いていると思われる。就労意欲はあることから、不安定な心身の状況でも就労できる仕組みがあれば、就労可能性は大いに高まると予想される。

上記のようなことから、当事者のニーズに叶うサービス形態としては、当事者住居地に近く、利用費用が低く、平日日中に専門職や家族と相談ができたり、レクレーションなどによって人と楽しく交流する形を望んでいるようである。


精神障害者が地域で生活する差異の悪循環の構図
「宮崎県における精神障がいを抱える方の就労及び地域生活に関するアンケート」中、
42 自由記述について。不満を中心に。

2015/5/3 作成:内田昌宏 

【自由記述についての考察】

周囲の人間に病気の知識がないために当事者に対する「無理解」が生じ、それが当事者を受容することに抵抗を生み、それにより当事者は周囲からの疎外感・孤立感を深めている様子がうかがわれる。

このことは、医療を筆頭とする精神科領域のサービス機関においても同様であるという当事者の認識を持っているようである。

誰しも病気を患えば孤立感を有するが、この心理と人的環境の不十分さ(当事者が望むような配慮のなさ)があいまって、当事者の疎外感は強まっていると予想される。

このような、当事者の孤立・疎外感をもととした全般的な対人緊張、対人不和感が、医療者・施設スタッフ・就労支援者・地域住民とのコミュニケーションを阻害し、治療の促進、就労・継続就労の促進、社会参画の促進を障害していることがうかがえる。

そしてこのことは、専門職をはじめ一般社会の理解の醸成に寄与しておらず、無理解の状況の改善に至っていない。

そしてこれら関連する要因が持続的な低収入状態を生じさせ、収入の低さは日常生活の活動範囲をせばめ、それゆえ社会から距離を置く生活を余儀なくされることとなり、社会からの疎外感がより強まるという悪循環が起きていると思われる。

このようなことが当事者の自己受容の低さに結びつき、自尊心は高くなりづらいと思われる。

それでいて当事者にあっては、こういう状況でありながらも夢ややりたいことを多く有している。

しかしながら夢や希望を社会の中で実現したいという意欲は高いが、自身の心身の状態の不安定さやそれに対する周囲の反応が障害となって、将来に不安を感じ、恋愛や結婚を含む夢の実現に向けて取り組むことをあきらめている印象を持つ。

記述全般を俯瞰してみたところ、当事者が抱える多数の困難のうち、他者との関わりの中で生じた問題を当事者は一番憂慮しているようである。またこれが本質的な社会参画阻害要因と見てとれる。

よって、この状況を改善するには、精神障害に対する周囲の理解の向上と併せ、周囲の反応をことさら否定的にとらえないという当事者の認知の幅を広げることにより改善できると思われる。

そしてこれには、当事者が自分の実状を語り、要望を伝えるという当事者から周囲・社会に歩み寄る行為が有効であろう。自ら主体的に人間関係を築く作業を行うことによって

「他者と関わる力」の向上を図るのである。それは他者と関わる価値のある自分を確認す

る作業でもある。

特に、現在実施している、当事者語りを端緒とした啓発活動によって相互理解の進展が

期待できよう。

 


   
 
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